設計事務所がどんなところか、大して知っているわけではないです…笑

前を歩いていた何の変哲もない後ろ姿が妙に気になったのは、手に持っているバッグだった。いや、正確にはバッグから突き出している紙包だ。
「今どき珍しい…青焼きじゃないか」
青焼きとは、ジアゾ式複写技法…なんて言っても通用しないが、一昔前には建築の図面などで良く使われていた。誰でも一度はあの、青インクで描かれたような図面を見たことがあるのではないだろうか。デジタルが主流になって急速に使われなくなったコピー手段だ。昔の資料などでは今でも見かけ、それほど珍しくもないが…
どう見ても図面は現在進行形の仕事に見える。なんとも頑固な設計事務所のデザイナーがいるようだ。
気になってしまって、急ぎ足でその背中を追い抜き、素知らぬ振りで振り返ってみると…どうやらボクの行動は「素知らぬ」どころかバレバレだったようだ笑。
『な、何か?』とでも言いたげな、戸惑い顔の女の子がこちらを向いている。
少なくとも彼女が『頑固なデザイナー』ではなさそうだ…人並みに消えていく彼女の青いジャケットを横目で追いながら、なんだか可笑しくなってしまったボクだった。